どれくらい経験が長くても難しいと感じることが多くあるのが、見積もり制作です。
ホームページ(以下、web)から会社案内のパンフレット、商品案内のリーフレット、名刺やロゴといったブランドデザインなども作っている僕達ですが、「デザインの制作費ってどうやって出してるの?」と聞かれることが多く、そのように思われる人は多くいると感じています。実は自分たちが会社勤めのデザイナーの時も「僕達のデザイン料って会社はどうやって決めているの?」と思っていました。
基本的にデザインの制作費用は会社によって違います。当たり前ですが、じゃあどうして当たり前なのか、の部分を、デザイン業界ではない人は解らないと想います。でもデザインの制作費用の出し方は、おそらくですがほぼ一緒だと僕は思っています。
代表が写真家としても活動していて、その写真撮影費の出し方🔗のことも書いています。基本部分の考え方は概ね一緒ですがデザイン制作の場合は、Webや紙媒体によって、そして作る目的によって変わることもあるため、一緒ではない部分も多々あります。
そこで、僕達が作る場合、どのようにして算出しているかを順序立てて書いていきますね。
実績の見方
先ず始めに、デザイン費用を算出する人(会社)によってなぜ違うのか、の理由からになります。仮にこの記事を読んでくれているあなたがデザイン制作をお願いしたい場合、どういったところを注視して依頼先を探しますか?
おそらく「実績があるところ」といった要項が非常に大切なことになると思います。
学生の時にデザインのことをみっちりと勉強してきた人でも実際の仕事では作ったことがない人、デザイナーとして仕事を始めてまだ2〜3年の人、もう10年以上もデザインの仕事をし続けてきた人、では歴然とした実績の差があります。それはセンスといったもので表現される部分もありますが、経験しないと学べないノウハウもあります。お客様とのコミュニケーションはもちろん、ユーザーや市場とのコミュニケーションにも長けてくるようになります。
実績だけが全てではない、上手いかどうかが大切と言われる人がいることも知っています。僕も昔はそうでした。でも経験を重ねるごとに、実績=経験に勝るものはない、と痛感しています。センスの有無は実績とはあまり関係ありませんが、ただ経験を積まないとセンスに磨きはかかりません。いくらセンスがあっても磨きがかかっていないと実績を積んでいないのと一緒の状況だと言えます。
■僕達が考える実績
制作したデザインを通して、デザイン提供したお客様の運営や事業などが目的を達成したり、成功しているか?そしてご提供したデザインが、世の中や市場、ユーザーから評価されているか?
こういった実績数やデザインの善し悪しでは表現できない部分もしっかりと注視すると、そのデザイン制作会社の実力が解るかと思います。総合的にみた熟成度合いが真の実績だと僕達は想っています。
ここから実際のデザイン制作見積り提案書の出し方を書いていきますね。
スケジュールの組み立て
これはWebや紙媒体、販促ツールといった作る媒体に関係なく必ずスケジュールを組み立てます。スケジュールがハッキリとしないと費用は見積もれません。そして、このスケジュールの組み立てはとても重要で、お客様の最終目的に向かっていく道程のスタートを作ることと一緒です。最終目的というのはデザインを作ることではなく、デザインを通してどうなっていきたいか、といった行く先の未来像です。その道程のスタート地点がしっかりとしていない場合、とても最終目的地に行くことは至難となります。どういったことでもそうですが、最初の一歩が最重要です。
そして僕達がスケジュールを組み立てる時にお客様と共有するスケジュール内容は以下の通りとなります。
01:ヒアリング/打ち合わせ 02:企画/リサーチ 03:コンセプト策定/ラフデザイン作成 04:デザイン制作 05:仕上がり検証 06:ご提案/プレゼン 07:再検証・調整 08:デザイン確定・納品 09:公開後の運用・活用法
中には「もっと簡単に出来るんじゃない?」を言われることもありますし、読んでいる人の中にも、そう思われる人もいると想います。
01:依頼 02:ヒアリング/打ち合わせ 03:デザイン制作 04:納品
こんな感じです。これでも作れないわけではないですが、このケースだと「作る」ことが目的となっていて、売上アップや集客アップといった本来の目的に繋がることはほぼ無理だと僕達は申し上げています、いつも。
時給と工数と制作
■時給のお話
スケジュールを上記のように出すと、100%ではないにしろ、ヒアリングから納品までの日数や時間といった期間が解ります。その中から、企画立案に充てれる日数、コンセプト策定に充てれる、といった具合に、どの工程にどれくらいの日数/時間が充てれるのかが解ります。そこに僕達の時給や制作代金を乗せていくわけですが、その時給ってどうやって出しているの?、と思われると想います。
時給の出し方は先に書いている、写真撮影費の出し方とほぼ同じです。自分(達)が設定している年収(年商)から逆算して出しています。
設定年商÷12(月)÷22(日)÷8(時間)
ただここで写真撮影費の出し方/考え方とは違う部分があります。写真撮影の労働日数よりも多い22日で日商を計算している部分です。デザイン制作に関しては純粋に制作としてPCやお客様に向き合う時間が取れる/取りやすくなるからです。
■工数のお話
Webでも販促ツールでも、もちろんブランドデザインでも、写真撮影の仕事と比べるとデザイン制作というのは時間を多く必要とします。内容にもよりますが、大掛かりなWebサイト制作や、何十ページもあるカタログ/パンフレット制作の場合、数ヶ月必要とすることもあります。
その数カ月の間、単純に制作だけをしているのではありません。スケジュールの中にあるように、ヒアリングや打ち合わせ、コンセプトの策定、仕上がり検証といった工程や要素も多くあり、これらを含めて仕事の進捗管理や時間・作業効率を監督・調整する役割が必要となってきます。それがディレクション業務に当たります。そしてディレクション業務の中には、企画やコンセプト策定するといったことも含まれます。こういった、実際に作られたデザインからでは解りにくい部分を制作費としてご提案することに難しさが生じてくることもあるため、「工数」といった項目が必要となってきます。
僕達はデザイン制作とは別に「工数」でディレクション費と企画・立案費をお見積書内に設けています。というか、他の制作会社でも殆どのところが設けていると思います。
◾️制作のお話
僕達のデザイン費の中身は、純粋な制作費と構成費に別れています。
制作費というのは文字通り、デザイン制作する費用です。構成費というのはどのようなデザイン(ビジュアル)でいくのか/魅せるのかといった、トンマナの本質に沿ったデザイン提案のことになります。
トンマナは全体を通した魅せ方/設計の基本書です。実際にお客様が活用したりユーザーが手に取る成果物をデザイン制作する際に必要なものであり、デザイナーの制作現場においては別の構成案/提案が必要となってきます。
簡単な例えですが、トンマナで「イラストを中心としたデザイン制作」となっていても、イラストを多用しては単調になってしまいます。トンマナに沿ったイラストを揃えても、どこにどのイラストを配置するか、配置する際の他デザイン要素とのバランス調整は魅せるのに大丈夫か、そういったデザインの魅せ方を構成しご提案しながらデザイナーは制作をしています。このため、デザイン費は「制作費+構成費」の計算式で僕達はご提案しています。
他の必要事項もあります
デザイン制作に対する見積り金額の出し方はここまでで概ね終わりです。残りは、紙媒体のデザインの場合だと、印刷費用が加算されます。看板やインテリアデザインの場合だと印刷の他に施工費用も加算されてきます。Webの場合だと、サーバー設定やドメイン設定、セキュリティ対策などの費用があります。
これらを意外と予算に組み込まれないお客様が多いことも事実としてあります。特にWebに関しては、知らないといった人も見受けることが多々あります。印刷や施工、環境整備も大事な要項となりますのでぜひこの機会に覚えてほしいと思います。
示している本質は価値
そしてもう一つ、大事なことがあります。大事というか、大切なことです。
見積もり金額というのは単純にこれまで書いてきた製作費と構成費だけでなく、価値という要素も入っています。どれだけの価値を込めるか、持たせているのかを示すものであると考えています。そして僕たちが持っている/持たせている価値だけでなく、お客様がご依頼してくださったものにはこれだけの価値があるんですよ〜!、なことを示すものでもあると考えています。
お客様の本当に大切なお金を預かって、お客様の夢や希望、要望を叶えるデザインを作成しているわけですから、どれだけの価値があるのかを理解し納得していただくためにも、製作費から構成費、工数といった細かい設定を僕たちは設けています。見積もり金額というのは単純にお金、いわゆる価格を示しているのではなく、価値を示しているのだと感じています。
まとめ
僕達の場合、これまでの内容の他に、公開後の運用・活用サポートも組み込みます。ただ公開後、半年〜1年間はほぼ無料でサポートしています。規模にもよりますがデザイン制作は決して安くはありません。高いお金をかけてくれるお客様の目的が叶うことは、デザイン制作する僕達も願うばかりです。
Webでも販促デザインでも、そしてブランドデザインでも、どうやって活用していくか、どのように運用していくかの方が本当に重要です。その活用・運用面でもサポートしていくことも僕達、クリエイター/デザイナーの重要な役割だと考えています。
しっかりと間違いのない活用・運用をしていくことで、最終目的に近づきやすくなります。今回の記事が参考になれば、嬉しく思います。
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
(初稿2019年8月27日/加筆修正2020年4月21日)