デザイン思考は、デザイナーが行う認知・思考プロセスを使って、ビジネス上の解決策を考える手法、とお伝えしています。
ユーザーの視点に立って自社が提供するサービスやプロダクトの本質的な課題やニーズを明らかにし、ビジネス上の課題を解決するための役立つフレームワークになります。そこで、当記事ではそのフレームワーク・プロセスを解説していきます。
デザイン思考がビジネスで活用されている理由
デザイン思考はグローバル企業でも取り入れられている思考法です。デザイナーがデザインを制作する思考プロセスを、ビジネスに活用することでイノベーションを起こせると考えられています。
インターネットが日常生活に当たり前のように浸透してきたなかで、これまでの方法では思うような成果が得づらくなってきています。今まで以上に創造的なアイデアが求められるようになりつつあります。その結果、デザイン思考への注目度が高まっています。
ビジネスシーンでデザイン思考が重視されている理由は、下記の記事でも紹介しています。ぜひ参考になさってください。
デザイン思考の基本プロセス
デザイン思考のプロセスは、アメリカのスタンフォード大学に拠点を置くデザイン事務所が2005年に提唱した以下の5つのプロセスで構成されているものが有名です。
共感
問題定義
創造
プロトタイプ
テスト
■プロセス1.共感
デザイン思考の中でも特に大切とされている考え方であり、工程です。
ユーザーがどのような課題や問題を抱えているのか、寄り添いながら理解を深めて問題の核心に迫ります。漠然とした考えではユーザーへの理解は深まりません。
観察
ユーザーが何を考えているのか、日常の言動を観察します。SNSなどで考えや思いを発信していれば、数日間の発信を追ってもいいでしょう。発信内容から「なぜこのようなことを言っているのか」と背景を深く考えます。
関わる
インタビューやアンケートなどをとおして、ユーザーと直接コミュニケーションをとります。しかし、この時の真の目的はユーザーの声を拾うことではなく、ユーザーの洞察を見つけることです。ユーザーの回答に「なぜ?」と返して深い意味を聞き出します。こうすることでユーザーが本当はどうしたいのか、ユーザーの真の目的にたどり着くことができます。
コミュニケーションを図る時は、自社や自身の先入観が入らないようにできるだけフラットに聞くことが大切です。そして、インタビューやアンケートで得た情報を基にユーザーになりきってみます。ユーザーとして体験することで、自身では気づかなかったことが見つかる可能性があります。
■プロセス2. 定義
共感のプロセスで得た知識を基に、解決すべき具体的な問題を明確に定義します。
得た情報をもとにユーザーが抱えている課題を明確にイメージして、 社内やプロジェクトメンバー同士で議論をしながら制作プロセスを進めるようにしましょう。
■プロセス3. 創造
新しいアイデアを出すというよりも、これまでのプロセスで生まれたアイデアをより具体的にするために、幅を広げる感覚で行います。アイデアを創造することに役立つ、いくつかのフレームワークを紹介します。
1. 代替
別の手法がないか、視点を変えてアイデアを考えてみる
2. 結合
異なる要素を組み合わせてみる
3. 適応
ニーズやトレンド、時代や環境に適したアイデアに改良する
4. 変更
サイズや色などを変更してみる
5. 削除
不要と思われる要素を取り除いてみる
6. 反転
逆にしたりして再構成をしてみる
■プロセス4. プロトタイピング
アイデアを具体的な形にするためのプロトタイプを作成します。 プロトタイプを作ることで製品の見た目や使用感がイメージしやすくなり、 ユーザー視点を得ることができます。そのため、製品に対して客観的な評価ができるようになります。プロトタイプはプロダクトや課題にもよりますが、以下のような方法で作成します。
ストーリーボード
ユーザーがどのようにプロダクトを使うのかイラストを用いて、プロダクトを使うユーザーのストーリーの絵コンテを作ります。利用するシーンがイメージしやすくなるため、ユーザーの行動や心理にも共感しやすくなります。
ペーパープロトタイプ
文字どおり紙に書き出してシミュレーションします。紙とペンがあればすぐに取り組めて、専門ツールなどの使い方がわからなくても、アイデアの共有がしやすいことがメリットです。
モックアップ
プロトタイピングツールを使用して、より実践的なプロトタイプを作成します。多く用いられるのはFigmaやAdobe XDです。共有や改良もしやすいメリットがある反面、ツールの利用法を覚えたり、さらには作成まで時間がかかるデメリットがあります。
■プロセス5. テスト
プロトタイプを実際にユーザーに試してもらます。そしてフィードバックを集めます。集めたフィードバックを活かすことで、実際のリリースまでに商品やサービスを改善することができます。
問題が指摘された場合はその問題を掘り下げて、商品やサービスをどのように改善すべきなのかの方針が計画しやすくなります。
デザイン思考に使える実践フレームワーク
デザイン思考を実践するためには、フレームワークを使うのも重要です。先ほど紹介したプロセスでいえば、「1.共感」で使うケースが多いです。そこで、デザイン思考の実践に使えるフレームワークを紹介します。
■共感マップ
ユーザーの認知や価値観を整理するためのフレームワークです。具体的には、以下の6つのセクションに分けて作ります。これらのセクションに情報を書いていくことで、ユーザーの内面的な感情や外部からの刺激に対する反応を捉えやすくなります。
考えていること/感じていること
聞いていること
見えているもの
言っていること/行動
ストレス
得られるもの
担当者間で認識をすり合わせられるのが大きなメリットです。
■SWOT分析
ビジネスモデルを整理するためのフレームワークです。下記4つの視点で、自社の商品やサービスを客観的にみて、課題や問題点を把握するようにします。
優位点
課題
機会
外的脅威
SWOT分析は改善点が見つかるだけでなく、将来的なリスクを予測できることも大きなメリットです。
■カスタマージャーニーマップ
ユーザーが自社の商品・サービスに関わるプロセスを可視化します。具体的な活用方法は、以下の2ステップに分かれます。
プロセスとして「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」の4段階を想定する
各プロセスにおけるユーザーの「思考」「感情」「行動」「課題」などの項目を設定する
ユーザーの購買体験の全体像を把握できるため、デザイン思考ととても相性のよいフレームワークです。
参考:HS広告スタジオのカスタマージャーニーマップ
■ビジネスモデルキャンバス
顧客セグメントや顧客との関係、価値提供に焦点を当てるビジネスモデルキャンバスも 重要なフレームワークの1つです。ビジネスモデルキャンバスは、アイデアや課題を具体的なビジネスの形に落とし込むツールとして役立ちます。アイデアを具体的なビジネス戦略へと落とし込むことができ、イノベーションの実現を加速させることができます。
まとめ
デザイン思考のプロセスは、事業展開やプロダクト開発をする際、活用が増えている思考法です。企業の経済的な成長には不可欠なものとして、セミナーの開催や関連書籍も増えてきています。
デザイン思考を自社ビジネスに取り組んで、事業の発展にしていく傾向はこれからも益々高まっていくでしょう。今回の記事が参考になれば嬉しく思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
デザイン思考のプロセスに必要な『創造力』は容易には身につけられません。そこでデザイン思考と同じようにユーザーを起点とするUI/UXデザイナーが注目を浴びています。専門的な分野となるため、社内育成が難しく時間もかかってしまう傾向が強いです。外部人材に頼ろうと考えている企業もいるのではないでしょうか。そんな時はぜひ、HS広告スタジオのご相談ください。UI/UXデザインでのサポートも承っております。